将来計画及び運営方針 275
5.将来計画及び運営方針
いろいろと厳しい客観情勢の中にあって,分子研のあり方,施設・センターの将来計画や運営方針等々の検討が平 成18年度においても活発に行われた。創設以来30年を越えた分子研にとって最も大きな変化は,昨年度のリポート でも触れたが,平成19年4月から実施された組織の大幅な再編である。1年以上に亘る議論を経て研究系と研究施設・ センターを大きく四つの領域に再編した。理論・計算分子科学,光分子科学,物質分子科学,生命・錯体分子科学の 4領域である。それぞれの領域に関連研究施設・センターを配置し,研究系と施設の連携を深め学問的深化をも目指 すものである。一方,施設・センターは,共同利用機関として極めて重要な存在であるので,組織図としては別途独 立にも記載する。汎用機器の共同利用体制をよりスムースにすること,及び,平成19年度概算要求で調査費程度の 予算が認められてスタートすることとなった「化学系研究設備有効活用ネットワークの構築」を受けて,新たに機器 センターを新設することとなった。これに伴い,分子スケールナノサイエンスセンターと分子制御レーザー開発研究 センターの一部機器をこの新機器センターに移管することとした。
各施設・センターの将来計画等は以下の各節で説明されているが,その主要なものは以下の通りである。「ナノ支援」 として行われてきた事業が,平成19年4月から「ナノテクノロジーネットワーク」と言う新しい企画となり,分子 研は引き続きその一部を担うこととなった。理研との連携研究を行っている「エクストリーム フォトニクス」は着々 と成果を挙げつつある。UV S OR は小型としては世界最高の性能を出しており,トップアップ運転への移行やレーザー との合体による新しい光の発信などでも大きな成果を挙げつつある。国家基幹技術としての次世代スパコン開発事業 のうち分子研が責任の中心を担っているナノ分野グランドチャレンジアプリケーションも順調に進行している。また, 自然科学研究機構内の大きな連携事業の一つである「分子・物質シミュレーション中核拠点形成」も機構内外の研究 者との連携研究が進められている。国際共同については,従来からの分子研独自の共同研究に加えて学術振興会の A si an C ore Program が認められ,アジアにおける分子科学の振興と若手研究者の育成を目指した具体的活動が始めら れている。
最後に,上述した「設備有効活用ネットワークの構築」は,全国の化学系組織を持つ大学の協力を得て,将来の有 効な体制構築を目指した活動を始めている。平成19年度には,この新しいシステムが働くことを実証し,平成20年 度概算要求で実質的予算が獲得できるようにしたいと思っている。国及び各大学の更なるご支援を御願いする次第で ある。また,もう一つの平成20年度概算要求として,「大学間連携による最先端固体 N M R の開発と有機分子材料・ 生体超分子構造解明の新機軸創成」(大学間連携)を計画している。